通貨単位:CC
運用開始:2024年7月1日
開発者:Digital Asset
公式サイト:https://www.canton.network/
ホワイトペーパー:https://www.canton.network/whitepapers
ソースコード:https://github.com/canton-foundation
開発言語:Daml
カントンコインとは?
概要
まず前提として、公式資料上の「キャントン」は、単独の投機的トークン名というより Canton Network というネットワーク基盤の名称であり、その上で使われるネイティブユーティリティトークンが Canton Coin(CC) である。
したがって初心者向けには、「キャントン=ネットワーク」「Canton Coin=その利用料・報酬に使われるトークン」と分けて理解するのが正確である。
Canton Networkは、プライバシーを保ったままアプリ同士を接続し、データや価値を同期できるよう設計された公開型ブロックチェーン基盤であり、特に規制や機密性が重い金融用途を強く意識している。
開発背景
Canton が生まれた背景には、既存のパブリックチェーンがそのままでは機関金融に使いにくい、という問題意識がある。
公式ホワイトペーパーでは、従来型のスマートコントラクトネットワークには大きく二つの制約があると整理している。
第一に、基盤ネットワークの透明性やガバナンスをアプリケーション側がそのまま引き受けなければならず、機密性やアクセス制御を細かく設計しにくいこと。
第二に、すべてのアプリが同じスループットを奪い合うため、あるアプリの混雑が他のアプリの手数料や遅延にも波及しやすいことである。
金融機関のように、データ秘匿、権限管理、安定した性能が必要な領域では、これはかなり致命的である。
そこで Canton は、ブロックチェーンを一枚岩の巨大な台帳として扱うのではなく、インターネットのような「ネットワークのネットワーク」として設計した。
各アプリケーション運営者が、自分のアプリのプライバシー、スケール、手数料、運用条件をある程度主権的に持ちながら、それでも他アプリと原子的に接続できる構造を目指している。
2023年の TestNet 解説でも、Canton は「公開チェーンの相互運用性」と「私設システムの統制性」を両立させる第三の道として説明されている。
仕組み
Canton の仕組みを初心者向けに言い換えると、「それぞれ独立して動くアプリや台帳を、必要なときだけ安全につなぐ仕組み」である。
Canton Network は複数のサブネットやアプリケーション群からなり、それらは synchronizer を通じて接続される。
特に Global Synchronizer は、Canton Network における最初の分散型同期基盤であり、異なる参加者やアプリケーションの間で、原子的なクロスアプリ取引を可能にする。
ホワイトペーパーでは、Canton はブリッジやレイヤー2を前提とせず、複数サブネット間でネイティブに相互運用できることを強みとしている。
スマートコントラクト層では Daml が重要である。
Daml はマルチパーティ型の契約や権限を表現しやすく、データを誰に見せるかをコード上に持ち込めるよう設計されている。
そのため Canton では、すべてのノードが全データを丸見えで持つ形ではなく、必要な当事者だけが必要な部分を見る「サブトランザクション単位の秘匿」が可能になる。
さらに Canton Coin は、Global Synchronizer のトラフィック料金支払い、アプリ利用料のネットワークネイティブ決済、そしてアプリ提供者やインフラ提供者への報酬付与に使われる。
FAQ では、供給面についても pre-mine や VC 割当ではなく、実際のネットワーク利用と貢献に応じて流通させる設計を掲げている。
特徴
・特徴1
Canton を他の主要チェーンと比べたとき、いちばん大きい特徴は 「公開性」と「秘匿性」を同時に狙っていること である。
Ethereum や多くの一般的なパブリックチェーンでは、台帳の完全複製と高い透明性が前提になりやすい。
一方で Canton は、公開ネットワークでありながら、アプリや資産ごとにプライバシー、権限、ガバナンスを調整できる構造を取る。
つまり「全員に全部見せる」でもなく、「完全に閉じた私設チェーン」でもない。
その中間ではなく、金融実務向けに別設計された系統だと考えると理解しやすい。
第二の特徴は、アプリ主権を保ったまま相互運用できること である。
一般的なチェーンでは、アプリは共通の手数料市場や共通の実行環境の影響を強く受ける。
しかし Canton では、各アプリが独立してスケールしながら、必要な場面では他アプリと原子的に連携できる。
そのため、Delivery versus Payment のような「資産と決済を同時に成立させないと意味がない」取引に向く。
また、Canton Coin の設計もかなり独特で、FAQ や公式資料では、早期投資家や創業者への先配布ではなく、実際にネットワークへ効用を持ち込んだ参加者に報酬が流れる構造を強調している。
多くのL1がバリデータ中心の報酬体系を取るのに対し、Canton はアプリ開発者や利用者も経済設計の中心に置こうとしている点が違う。
第三の特徴は、最初から実需寄りの用途を強く意識していること である。
Canton の公式ユースケースやプレスリリースを見ると、話題の中心はミームトークンや一般個人向けNFTではなく、担保移動、国債ファイナンス、トークン化MMF、デリバティブ証拠金、給与支払いのような業務フローである。
つまり、Canton は「金融商品や業務処理をどう安全につなぐか」に照準を合わせたネットワークであり、その意味で Solana や Ethereum のような汎用パブリックチェーンとは競争軸がかなり異なる。
現実事例
現実事例としては、まず Hashnote の USYC がわかりやすい。
2024年10月、Hashnote の利回り付きトークン化MMFである USYC が Canton 上で利用可能になり、発行者と保有者以外に資産情報を見せずに担保として動かせる点が強調された。
これは Canton の「プライバシー付きで実務資産を使う」という思想をそのまま表した事例である。
次に DTCC 系の担保・証拠金最適化パイロット がある。
2024年9月には、トークン化した米国債を使って、マージンコール対応や資産リコール、クローズアウト時の担保管理など、より複雑なリアル金融の処理が実行可能であることが示された。
さらに2025年8月には、USDC を現金脚、オンチェーンの米国債を担保脚として用いる 完全オンチェーンの米国債ファイナンス が Canton 上で実施され、週末を含む24時間運用の可能性が打ち出された。
2026年には用途がさらに広がり、機関向けのプライベート給与支払い が Canton 上で実施された。
公開チェーンでは給与額や受取先が丸見えになることが大きな障害だったが、Canton はそこをプライバシーで解決した。
また同年2月には、トークン化 Gilt を用いた クロスボーダーのイントラデイ repo も公表されており、単なる実証段階から、金融実務の細かなワークフローへ踏み込み始めていることがわかる。
歴史
Canton の歴史は、大きく三段階に分けて見ると理解しやすい。
第一段階は 構想と接続実験の段階 で、2023年にネットワーク構想が公表され、同年7月に TestNet が立ち上がった。
第二段階は 実証から本番化へ移る段階 で、2024年3月に大規模パイロットが完了し、同年7月に Global Synchronizer と Canton Coin が go-live した。
第三段階は 実務ユースケースの拡張段階 で、2024年後半から2026年にかけて、USYC、担保移動、国債ファイナンス、給与支払い、クロスボーダーrepoといった、より本番に近い事例が相次いでいる。
単なる「新しいL1の登場」ではなく、金融業務の接続基盤として段階的に育てられてきたプロジェクトだと言える。
以下年表
-
2023年5月
Digital Assetと主要市場参加者がCanton Network構想を発表
-
2023年7月27日
Canton Network TestNet が公開
-
2024年3月12日
22の独立dAppをつないだ大規模RWAパイロット完了
-
2024年7月1日
Global Synchronizer と Canton Coin が go-live
-
2024年10月15日
Hashnote の USYC が Canton 上で利用可能に
-
2025年2月25日
Euroclear と Digital Asset が担保移動プロジェクト第1段階を開始
-
2025年8月12日
USDC とオンチェーン米国債を用いた完全オンチェーンの米国債ファイナンスを実施
-
2026年2月10日
機関向けプライベート給与支払いを実施
-
2026年2月24日
トークン化 Gilts を用いたクロスボーダー・イントラデイ repo を公表
参考文献
- Canton Network 公式サイト:https://www.canton.network/
- Canton Network Whitepapers:https://www.canton.network/whitepapers
- Global Synchronizer:https://www.canton.network/global-synchronizer
- FAQ:https://www.canton.network/faq
- Canton Coin: A Canton-Network-native payment application:https://www.canton.network/hubfs/Canton%20Network%20Files/Documents%20%28whitepapers%2C%20etc...%29/Canton%20Coin_%20A%20Canton-Network-native%20payment%20application.pdf
- Canton Network: A Network of Networks for Smart Contract Applications:https://www.canton.network/hubfs/Canton/Canton%20Network%20-%20White%20Paper.pdf
- Polyglot Canton Whitepaper:https://www.canton.network/hubfs/Canton%20Network%20Files/whitepapers/Polyglot_Canton_Whitepaper_11_02_25.pdf
- GitHub(Canton Foundation):https://github.com/canton-foundation
- GitHub(digital-asset/canton):https://github.com/digital-asset/canton
- GitHub(digital-asset/daml):https://github.com/digital-asset/daml
- GitHub(hyperledger-labs/splice):https://github.com/hyperledger-labs/splice