ハイパーリキッド(Hyperliquid)

~高速取引を前面に出した新鋭~
取引所機能を高度化し、スマートコントラクトも備えた次世代の分散型金融プラットフォーム。

通貨単位:HYPE
運用開始:2024年11月29日
開発者:ジェフ・ヤン(Hyper Foundation)
公式サイト:hyperfoundation.org/
ホワイトペーパー:hyperliquid.gitbook.io/hyperliquid-docs
ソースコード:github.com/hyperliquid-dex
開発言語:周辺ツールは複数言語、コアはRust系とみられるが、L1本体の言語は公式明記未確認




ハイパーリキッドとは?

概要

Hyperliquidは、単なる「分散型取引所の銘柄」というより、取引基盤そのものを内蔵した独自L1ブロックチェーン として理解したほうが正確である。
公式Docsでは、Hyperliquidは「完全オンチェーンのオープンな金融システム」を目指す高性能L1と説明されており、その中核には HyperCore と HyperEVM の二つの実行領域がある。
HyperCoreはオンチェーンのパーペチュアル先物とスポットのオーダーブックを担い、HyperEVMはEthereum系の開発者が使いやすい汎用スマートコントラクト環境を担う。
つまりHyperliquidは、取引とアプリ開発を別チェーンで分けるのではなく、同じチェーン上で一体化させる ことを狙った設計である。

この設計により、HYPEは単なる売買対象ではなく、ネットワークの利用・保護・拡張に関わる実用トークン になっている。
公式Docsでは、HYPEはネットワークコストの支払い、ステーキング、取引手数料割引などに使われるとされている。
一言でいえば、Hyperliquidは「高速なオンチェーン取引所」では終わらず、取引所機能を土台にした金融アプリ基盤 を目指すプロジェクトである。

開発背景

Hyperliquidが生まれた背景には、既存のDeFi取引基盤への不満がある。
公式のCore contributorsページによれば、チームは2020年に暗号資産の自己勘定マーケットメイクを行っており、2022年夏にはDeFiへ本格的に関わる中で、当時の既存プラットフォームに市場設計の弱さ、技術的な弱さ、UXの悪さ があると感じた。
中央集権取引所と比べると、分散型の仕組みは透明性が高い一方で、速度や使いやすさ、板取引の実用性では大きく見劣りしていた。Hyperliquidはその差を埋めるために作られた。

ここで重要なのは、Hyperliquidが最初から「DeFi版CEXを作りたい」という発想をかなり強く持っていた点である。
一般的なDeFiはAMM中心で発展してきたが、Hyperliquidは オーダーブック、約定、清算、証拠金管理 をオンチェーンで高性能に動かすことを重視した。
そのため、既存L1の上にアプリを載せるのではなく、最初から取引向けに最適化したL1を自前で設計している。
背景を理解すると、Hyperliquidの強みは「派手な機能の寄せ集め」ではなく、取引インフラを根本から作り直そうとした思想の一貫性 にあるとわかる。

仕組み

Hyperliquidの仕組みは、HyperBFT・HyperCore・HyperEVM の三層で捉えると理解しやすい。
公式Docsによれば、Hyperliquidは独自コンセンサスである HyperBFT を採用し、その上で HyperCore と HyperEVM が動く。
HyperCoreでは、パーペチュアル先物とスポットのオーダーブックが完全オンチェーンで処理され、注文、取消、約定、清算が透明に実行される。
公式説明では、HyperCore は 200,000 orders/second をサポートし、すべての処理はHyperBFTの一ブロック確定性を継承する。

一方のHyperEVMは、Ethereum系の開発体験を持ち込みながら、HyperCoreの流動性や板情報を直接使えるようにした環境である。
しかもHyperEVMは別チェーンではなく、HyperCoreと同じHyperBFTに守られた同一状態空間の一部 である。
これにより、EVM上のアプリがHyperCoreの価格情報やオーダーブックへ直接アクセスできる。
公式Docsでは、たとえば貸付プロトコルがHyperCoreの板情報を読み取り、それをもとに清算ロジックを発動し、必要なら板に直接注文を出すことまで想定されている。
これは一般的な「別チェーンのDEXをオラクル経由で参照する構成」よりも、はるかに密結合である。

さらに、HYPEはHyperEVM上ではガストークンであり、HyperCore内ではステーキングや取引関連の用途も持つ。
バリデータ運用は permissionless で、公式Docsでは 誰でもバリデータ/非バリデータノードを動かせる とされ、アクティブセットは ステーク上位24 により透明に決まる。
ステーキングは delegated proof of stake 方式で、バリデータは自己委任要件を満たして稼働する。
つまりHyperliquidは、取引のためのチェーンでありながら、トークン、ノード、アプリ、板流動性が同じ設計思想でつながっている のが特徴である。

特徴

Hyperliquid の特徴を理解しやすく、かつ深めていく。以下の点が特に注目される。

  1. オンチェーン注文板(Order Book)

    多くの DEX(分散型取引所)は AMM(自動マーケットメイカー)方式を採用しており、注文板という概念が薄かった。
    一方、Hyperliquid は “完全にオンチェーンの注文板” を採用しており、「各注文・キャンセル・取引・清算」がチェーン上で記録され、可視性が高い。

    これにより、処理の透明性とユーザー信頼性が向上する。さらに、処理の確定速度(ファイナリティ)が「1ブロック」であるという記載があり、従来の DEX よりも注文・約定・清算の遅延を抑える設計となっている。

    つまり、「ユーザーが注文を出してから処理が確定するまでの時間が短い」こと、かつ「処理の流れがブロックチェーン上で追える」ことが大きな強みである。

  2. 高スループット・高性能

    Hyperliquid は秒間数十万件の注文処理を想定して設計されており、公式には「200 k orders/second」をサポート可能とされている。

    このような高性能設計により、取引が集中する時間帯でもスムーズな処理を目指しており、従来 “オンチェーン=遅い” という印象を打破する狙いがある。

    また、ノード運用に関しても「検証ノードには32コア/128 GB RAM/1TB SSD」「非検証ノードでも16コア/64 GB RAM/500GB SSD」という記載があり、
    インフラ面から性能を重視していることが伺える。

    このように、システム全体が「高速・確定迅速・大規模処理可能」という方向で設計されている。

  3. スマートコントラクト互換性(EVM互換)+流動性・取引機能の統合

    多くの L1チェーンがスマートコントラクト機能を持つが、取引所機能(特に注文板・先物)に特化して設計されたものは少ない。
    Hyperliquid は、注文板/先物機能(HyperCore)と、スマートコントラクト機能(HyperEVM)を統合することで、次のような特徴を持つ。

    • デベロッパーが EVM 互換の環境で既存の Solidity/Ethers 等のツールを使ってアプリを構築可能。
    • スマートコントラクト上から HyperCore の流動性・注文板機能を呼び出すことが可能で、例えば、流動性提供(マーケットメイキング)、清算戦略、ポジション管理などを dApp 化できる。
    • これにより、「流動性」「取引」「アプリケーション構築」という3つの柱が同じチェーン上に存在し、相互にシナジーを持ちやすい。
      公式でも
      「Liquidity, user applications, and trading activity synergize on a unified platform」
      (流動性、ユーザーアプリケーション、および取引活動が、統一されたプラットフォーム上で相乗効果を生み出します。)
      と記されている。

  4. ネイティブトークン「HYPE」の役割

    このプラットフォームにはネイティブトークン「HYPE」が存在し、トークン単位については次のような観点がある。

    • HYPE は HyperEVM における「ネイティブガストークン(ガス代支払い用トークン)」として扱われる。
      例えば、HyperEVM 側では HYPE がガストークンであり、
      HyperCore ⇄ HyperEVM 間の転送でも HYPE が特別なシステムアドレス “0x2222222222222222222222222222222222222222” に対応しているという説明がある。
    • また、公式サイトでは「誰でも所有し、ガバナンスに参加できる」と紹介されており、トークン保有者がこのプラットフォームの運営・改善提案(HIP=Hyperliquid Improvement Proposals)等に関わる可能性がある。
    • さらに、プラットフォーム全体が “the blockchain to house all finance” のスローガンを掲げており、HYPE トークンを通してそのエコシステムに参加する仕組みが設けられていると読み取れる。

  5. 開発・運営体制・オープンソース要素

    開発者向けの SDK(ソフトウェア開発キット)やノードソフトウェアが GitHub 上で公開されており、例えば Python SDK や Rust SDK、TypeScript/Node など多様な言語でサポートされている。

    さらに、ノード運用に関する技術要件も公開されており、Ubuntu 環境での実装例、Docker での運用例などが記載されている。

    このような公開体制から、技術者・開発者もアクセス可能なオープンなエコシステムであると言える。

  6. 透明性・モジュール性

    HyperCore と HyperEVM の間の資産移動、スマートコントラクトと注文板機能の連携、ガスバーンモデルなど仕様がドキュメント化されており、利用者・開発者に対して仕様が明らかになっている。
    例えば、ERC20トークンと Core spot 資産のリンク方法がドキュメント化されている。

    この透明性により、初心者でも「どこで何が動いているか」を追いやすくなっている。

  7. 将来展開・拡張性

    スマートコントラクト互換機能と高速取引インフラを備えることから、将来的には流動性提供戦略、マーケットメイキング、デリバティブ(先物)など高度な金融機能がオンチェーンで広がる可能性を持つ。
    実際、技術記事では「先物需要貸出プール(Perpetual Demand Lending Pools)」という概念の中で、Hyperliquid が参照されている。

    また、ドキュメントには「ユーザーアプリ/取引/流動性が統一されたプラットフォーム上で相互作用する」という記述もあり、
    今後 “トレーディング以外のアプリケーション(たとえばレンディング、流動性マネジメント、ボールト)” の構築も意図されている。

以上のような特徴により、Hyperliquid は「次世代の取引所兼スマートコントラクトプラットフォーム」として、初心者にとっても興味深い技術的特徴を持っている。

現実事例

現実事例としてまず挙げやすいのは、HyperEVM上でコミュニティ主導のアプリやツール群がすでに構築されていることである。
公式Docsは、ASXN、HypurrCo、HL Eco、Hyperliquid.wiki などのエコシステム・ディレクトリを案内しており、Hyperliquidを単なる取引画面ではなく、アプリ群の入口として扱っている。
また公式Docsは、レンディング、トレーディング、利回り生成などのアプリをHyperEVM上で構築し、HyperCoreの流動性に直接アクセスできると説明している。
これは「取引基盤を使うためのチェーン」から「金融アプリを作るためのチェーン」へ役割が広がっていることを示す。

次に、2026年3月には Hyperliquid上のWTI連動オイル perpetual が、週末も含めた24/7取引の受け皿として注目された。
Wall Street Journal の報道では、地政学イベントの最中に Hyperliquid 上の oil futures の累積出来高が急増したとされており、暗号資産ネイティブの基盤が、暗号資産以外の市場テーマをオンチェーンで扱う実例として取り上げられている。
さらに同月には、S&P Dow Jones Indices が Trade[XYZ] 向けに S&P 500 指数を Hyperliquid 上の perpetual contracts 用に正式ライセンス した。
これは、Hyperliquidが暗号資産だけでなく、より広い金融アセットの受け皿として認知され始めていることを示す象徴的な事例である。

歴史

Hyperliquidの歴史は、単にトークンが出た時点からではなく、2022年の構想、2023年の初期稼働、2024年のL1フェーズとHYPE登場、2025年のHyperEVM始動、2026年の伝統金融アセット接続 という流れで追うと理解しやすい。
公式Docsからは、チームが2022年夏にDeFiの限界を強く意識して開発へ向かい、2023年にはclosed alphaとポイント施策が動き、2024年にはL1フェーズが進み、同年11月にHYPE genesis event が行われたことが確認できる。
2025年2月にはHyperEVMがメインネット稼働し、2026年3月にはS&P 500 perpetualや oil perpetual の事例が外部報道で目立つようになった。

以下年表

  • 2020年

    チームは暗号資産の自己勘定マーケットメイクを行っていた。

  • 2022年夏

    既存DeFiの市場設計・技術・UXの問題を受け、Hyperliquid構想を本格化。

  • 2023年10月31日以前

    closed alpha期間が存在。

  • 2023年11月1日

    ポイントプログラム開始。

  • 2023年

    legacy HyperCore vaults が導入される。

  • 2024年5月29日

    L1 phase のポイント施策開始。

  • 2024年11月

    L1 phase のポイント施策終了。

  • 2024年11月29日

    HYPE genesis event。HYPEトークンの実運用開始の基準日として見やすい。

  • 2025年2月18日

    HyperEVM の初回メインネット稼働開始。

  • 2025年後半

    HIP-1、HIP-3 など permissionless 資産発行・市場展開の仕組みがDocs上で整備。

  • 2026年3月

    WTI連動oil perpetual が大きく注目される。

  • 2026年3月18日

    S&P 500 perpetual contract が Hyperliquid 上で公式ライセンス付きで展開。

参考文献

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